なぜ春は肝が活発に働くのか?

自然のサイクルとしての「春と肝」
中医学では「天人相応」という考え方があり、人間の体も自然のリズムと連動しています。

五行説での対応

春 → の性質 →と対応

木(植物)が春に芽吹き、伸びやかに成長するように

肝も春に「気」が伸びやかに発展しようとする力が強まる

肝の「疏泄(そせつ)機能」が活発化します。疏泄とは「気・血・水」の流れをスムーズにする機能のことです。

春の陽気の温かいエネルギーが上昇すると、肝も同じように上に向かう力が強まる

自然界の成長・発散のエネルギーが、人体では肝の機能として現れる

肝が活発になりすぎると起こる不調のメカニズム・良い働きと過剰な働き

正常な肝の働き:

気血の流れをスムーズにする

感情を安定させる

消化を助ける

月経を規則的にする

活発になりすぎた肝の問題

「肝気鬱結(かんきうっけつ)」や「肝陽上亢(かんようじょうこう)」という状態に

具体的な不調とその理由:

●眠りの浅さ

理由:肝の「気」が上昇しすぎて、頭部に熱や気がこもる

「魂(こん)」を蔵する肝が不安定になると、魂がしっかり留まれず、眠りが浅くなる

特に深夜1〜3時(肝の時間帯)に目が覚めやすい

●イライラ・怒りっぽさ

理由:肝の疏泄機能が過剰になり「気」が突き上げる

肝の感情は「怒り」

気の流れがスムーズでないと、小さな刺激でも感情が爆発しやすくなる

●抑うつ感・気分の落ち込み

一見矛盾するが:肝気が行きすぎると「反動で鬱結(停滞)」

気が通らずに詰まった状態 → やる気が出ない、気分が沈む

「気のうっ滞」が長引くと「血のうっ滞(瘀血)」につながる

●だるさ・疲れ

理由:肝が脾(消化器系)を攻撃する「肝木剋脾土(かんもくこくひど)」

肝が強すぎると、脾の働き(エネルギー製造)が抑制される

食べ物から気血を作れず、エネルギー不足に

●目のかすみ・乾き

理由:肝は目に「開竅(かいきょう:つながりを持つ)」

肝の血が不足すると、目に栄養がいかない

肝の熱が上がると、目が充血・かすむ

春の陽気で肝熱が上がりやすい

肝が働くことで最も影響を受ける臓器

第1位:脾(消化器系)
関係性:五行説で「木(肝)は土(脾)を剋す」

肝が強すぎると → 脾を抑制しすぎる

影響:

食欲不振・胃もたれ
軟便や下痢(特に緊張するとお腹を下す)
エネルギー生成不足 → 慢性的な疲労

第2位:胆
関係性:表裏関係「肝と胆は表裏一体」

肝が決断を、胆が実行を担当

肝気が滞ると胆の機能も低下:

決断力の低下

臆病になりやすい

第3位:腎
関係性:五行説で「肝腎同源(かんじんどうげん)」

肝の血と腎の精は互いに変換・補充し合う

肝が消耗しすぎると腎も消耗:

めまい

耳鳴り

腰のだるさ

春の養生で大切なことは、肝を整えること・過剰な肝の働きを和らげる方法

食養生

酸味:適度に(控えめに)→ 肝気を収める。特に冷え性の人は、少なめに。

苦味:春野菜(菜の花、ふきのとう)→ 肝熱を冷ます

香りのよいもの:春菊、セロリ→ 気の流れを良くする

生活養生

早起きして散歩(肝気を外に発散)

深呼吸で気の巡りを良くする

緑を見る(木の気でバランスを取る)

感情養生

イライラしたら「その感情を一旦受け止め、ゆっくり吐き出す」

日記を書く(気の鬱結を解消)

好きな音楽を聴く(気血の流れを良くする)

具体的な春の過ごし方例:
「朝は活動的に、夜は静かに」

朝:肝気を適度に発散させる活動を

夜:21時以降はリラックスして肝を休める

特に深夜1-3時は眠っていることが肝の修復に大切

まとめ:春の肝のバランス

「肝は将軍の官」と呼ばれ、体全体の気血の流れを指揮します。

春はこの将軍が活発になりすぎて暴走しないよう、
適度な発散と十分な休息のバランスが大切です。

木々が春風にそよぐように、
「強すぎず、弱すぎず」の柔軟な肝の状態を目指すことが、
春を健やかに過ごす中医学の智慧です。

自分の感情や体調の変化を肝のメッセージとして受け取り、
早めに調整することが、季節の変わり目を乗り切るコツとなります。