入院で気づいた私の「悪阻」と「貧血」克服法
献血できない鉄不足体質
私は、もともと鉄分が不足しやすい体質です。医師からは「鉄の貯金が少ないタイプ」と表現されたこともあります。そのため、少し不摂生をするとすぐに鉄分が足りなくなり、疲れやすくなってしまいます。
母も妊娠中、デパートで突然視界が真っ暗になり、貧血で倒れたことがあるそうです。私も、そして私の娘も、その貧血体質を受け継いでいるようで、献血をしようとしても断られることが多く、できたとしても後で頭痛がひどくなるため、もう何十年も献血をしたことはありませんし、これからもしないと思います。
このページでは、私の妊娠初期のトラブルを書いていますが、後半に鉄分補給のレシピも載せているので、普段、鉄分の摂取や便秘などに悩んでられる方の参考情報にもなれば幸いです。
妊娠初期の私は、ひどいつわりに悩まされ、ご飯が食べられず、胸やけで眠れない日々が続きました。栄養が摂れなかったせいで、重度の貧血になりました。
当時、診察で「つわりがひどくて食べられません」と伝えても、医師からは「痩せられるからいいじゃない」と軽く流され、吐き気止めの薬も点滴も出してもらえませんでした。
不思議な気持ち悪さのトリガーは視覚からも
よく「ご飯の炊ける匂いやコンビニのもわっとした空気がつらい」と言われますが、私の場合、大きなクマのぬいぐるみの毛羽立った感じを見るだけで気持ち悪くなるという、不思議な現象がありました。他にも、「エレクトーンを見ると吐き気がする」と言っていた妊婦さんもいて、原因はわからずとも、つわりは本当に人それぞれなんだなと思います。
つわりはアレルギー反応のようなもので、逆に「つわりがある=赤ちゃんが元気な証拠」とも感じました。というのも、流産してしまったときは、全くつわりがなく、体の不調もなかったからです。
つわりによるムカムカは、自分でなんとか工夫して和らげるしかありませんでした。私は、ミントのキシリトールガムを常に噛んだり、ノンシュガーの飴をなめたりしていました。でも、体重を減らすように言われていた時期だったので、「ノンシュガーでも糖分あるって分かってる?」と注意されたこともあります。
最終的にたどり着いたのは、薬局で手に入る「水なしで舐められるタブレットタイプの吐き気止め」でした。これが本当に助けになりました。そのことを担当医に伝えると、「じゃあ、ちょうどよかったわね」と軽く返され、妊婦のつわりの苦しみは、あまり深刻に受け止められていないように感じました。
眠れない、吐けない、眠れない毎日から入院
夜も眠れないほどの吐き気、吐きたくても吐けない辛さは、精神的にもかなり応えました。夫の食事を作るのが本当に苦痛で、作らなかったこともありました。そんな時、義母が「うちの息子はこのお造りが好きだから」と持ってきてくれたのですが、ありがたい気持ちよりも手抜きを責められているように感じてしまい、ストレスになったこともあります。
今思えば、考えられないほどナイーブでネガティブだったと思います。仕事も辞め、専業主婦として家にいたため、気がまぎれることも少なく、また、ネットもない時代だったので、悩みを共有したり、情報を集めるのも一苦労でした。
でも入院をすすめられてからは、そうした「余計な気遣い」がなくなり、心が少し楽になったのを覚えています。
貧血の克服は簡単じゃない
産婦人科の病室は4人部屋で、さまざまな悩みを抱えた妊婦さんたちと一緒でした。みんな初めての妊娠だったようで、胎児が小さすぎると診断された方、絶対安静で帝王切開予定の方、ずっと点滴を付けたまま過ごしている方などがいました。
年齢も近く話しやすかったので、毎日のように愚痴をこぼしたり、情報交換をしたり、まるで修学旅行のような一体感がありました。あの空間は、孤独になりがちな妊婦生活の中で、精神的な支えになっていたと思います。
私は比較的軽症で「いつでも退院できる」と言われていましたが、精神的に安定していられることが何より大切だったので、しばらくそのまま入院を続けました。つわりで栄養が偏っていたため、点滴で栄養を補ってもらうことができ、身体も少しずつ回復していきました。
私の血液のヘモグロビン値はかなり低く、確か7g/dlほどだったと思います。通常は11~12g/dl、妊娠中でも10.5g/dl程度あれば良いとされているので、かなり深刻な数値でした。朝晩2回、大きめの鉄剤を処方され、しっかり飲むよう指示されました。
同室の妊婦さんたちも、2人ほど鉄剤を飲んでいて、それだけ妊娠中は赤ちゃんに栄養を持っていかれるのだと実感しました。
私は、ヘモグロビン値が、10手前になるまで2週間ぐらい掛かり、つわりも少しマシになったので、それを機に退院しました。
鉄剤と便秘の副作用に悩まされて
※ここから先は食事中の方は読み飛ばしてくださいね。
鉄剤を飲むと便が黒くなるのですが、3~4日ほどでひどい便秘になってしまいました。同室の方のひとりは、便秘が重症で、鉄剤で便がカチカチになって出なくなり、摘便の医療処置をしてもらったと知らせてくれました。
ああ、そこまでになるのは嫌だ!普段は便秘に悩むことがなかった私にとって、これは予想外でした。便が固くなることで切れ痔状態かそれ寸前になってしまい、排便のたびに痛みを感じるようになり始めたので、どうしたものかと焦りました。
そんなとき、同室のもう1人の妊婦さんが、同じく「センナ茶、サラシア茶を飲むと便が柔らかくなっていいよ。ほんの少しからね!」と教えてくれました。試してみたところ、かなり楽になり、切れ痔の症状の痛みもずいぶんと軽くなりました。
センナ茶の効能と注意点
便秘に使われるお茶です。サラシア茶よりかなりダイレクトです。妊婦でなくてもセンナ茶を煮出したやかんをテーブルに置いて置いたら、家族が普通のお茶と思って飲んでしまい、激しい下痢になったという事件も起こります。私は、つらい時期だけ、ほんの薄いセンナ茶から飲んで、徐々に取り入れることで、思いのほか助けになりました。
センナ茶の薬膳的な性質
寒性のお茶で帰経は、大腸。清熱、通便の働きがあり、適するタイプは、熱が籠るタイプ、一時的に宿便の解消をしたい場合
- 大腸を刺激し排便を促す。
- 老廃物を排出する作用があるため肌荒れや吹き出物の改善が期待できる。
サラシア茶(更科茶)の効能と注意点
サラシア茶は腸のぜん動運動を刺激するため、濃くしすぎると下痢になる可能性があります。特に身体を冷やす作用もあるため、妊婦さんが使う際は注意が必要です。利尿作用も強いため体質に合わない人には注意です。
サラシア茶の薬膳的な性質
涼性のお茶で帰経は、肝、脾、胃。消化器の代謝に作用すると解釈されています。
- 糖の吸収を抑制作用がある。血糖値の上昇を緩やかにする。
- 腸のぜん動運動を助ける作用、便を柔らかくする効果がある。
- 脂質代謝促進。脂肪の吸収抑制
- 抗酸化作用。活性酸素除去しアンチエイジングに役立つ。
鉄分摂取のポイント
私は、妊娠初期のつわりの酷さから食べられず、栄養不足で貧血となり、鉄剤摂取で酷い便秘になりました。つわり→栄養不足→貧血→鉄剤副作用で便秘という負の連鎖を経験しました。どんな病気にも共通して言えることは、こういう連鎖です。この一連の流れを見ると、つわりさえ解決できれば、何の問題も起こらなかったのに、つわりは病気じゃないと軽んじられていたなとつくづく思いますし、情報が少なかったと思います。そして食事の大切さを改めて認識します。
季節と体質で選ぶ薬膳的・鉄分補給レシピとおすすめ生薬
鉄分不足が気になる方へ
貧血や疲れやすさ、肌のくすみ、月経トラブルなど…実は「血の不足=血虚(けっきょ)」が関係していることが少なくありません。薬膳では、鉄分を「補血(ほけつ)」という視点でとらえ、体質や季節に応じてアプローチを変えるのが特徴です。
今回は、薬膳の考え方を取り入れた「鉄分補給レシピ」と「補血におすすめの生薬」をご紹介します。季節は、参考程度に、その時の体調に合わせて冷蔵庫にある食材と組み合わせたりして楽しみながら作ればいいと思います。また外食時の選択の参考に。
【春】肝の働きを助けてストレス&月経不調に対応
● 鶏レバーと小松菜の黒酢炒め
肝を養い、気の巡りをスムーズにする黒酢を使ったレシピ。レバーと青菜の最強コンビで補血力アップ。
● クコの実とほうれん草の温サラダ
目の疲れや精神的なイライラにも◎。クコの実で肝腎をサポート。
【夏】気陰を補って体力ダウンを防ぐ
● あさりとトマトの冷製スープ
あさりの鉄分と、トマトのビタミンCで吸収率をアップ。火照りやすい夏の体にぴったりの一皿。
● レーズンとハトムギの薬膳ゼリー
美容にもよく、腸も整う鉄分おやつ。冷たくても身体を冷やしすぎない工夫がポイント。
【秋】乾燥から血を守る。潤いと補血のレシピ
● 豚レバーと白きくらげの生姜スープ
乾燥で失われがちな血と潤いを補いながら、冷えも防ぐ一品。
● なつめと黒ごまのおこわ
脾を健やかにしながら、しっかり補血。秋の行楽やお弁当にもおすすめです。
【冬】腎精と血を深く養う、温めレシピ
● 黒きくらげと牛肉の生姜炒め
寒さで冷えがちな体に。腎・血・陽の三つを補う冬の定番レシピ。
● 杞菊黒米粥(クコの実+菊花+黒米)
朝の冷えた体に染み入る、胃腸にやさしい補血粥。視力ケアにも。
鉄分が豊富な食材一覧
◆ 動物性食品(ヘム鉄:吸収率が高い)
食材名 | 鉄分(mg/100g) | 薬膳的効能 |
---|---|---|
豚レバー | 13.0 | 補血・疲労回復 |
鶏レバー | 9.0 | 肝の養生・補血 |
あさり | 3.8 | 補血・清熱 |
ひじき(乾燥) | 6.2 | 補血・便通促進 |
黒ごま | 9.6 | 補腎・養血・美髪 |
◆ 植物性食品
食材名 | 鉄分(mg/100g) | 薬膳的効能 |
---|---|---|
小松菜 | 2.8 | 清熱・補血・肝の養生 |
納豆 | 3.3 | 補気・脾胃を養う |
プルーン(乾燥) | 1.0 | 補血・潤腸通便 |
ほうれん草 | 2.0 | 養血・明目 |
大豆 | 6.8 | 補脾・補血・利水 |
◼️鉄分豊富な生薬
生薬名 | 作用 | 使い方の例 |
---|---|---|
当帰(とうき) | 補血・活血・月経調整 | スープ・煎じ茶・鍋に少量 |
熟地黄(じゅくじおう) | 補血・補腎・潤燥 | 黒糖と煮て薬膳シロップに |
竜眼肉(りゅうがんにく) | 補血・安神・健脾 | 粥やお茶に加える |
山薬(さんやく)山芋 | 健脾・補腎・補気 | 煮込み料理やスープに |
阿膠(あきょう) | 補血・止血・滋陰 | なつめと一緒に薬膳ゼリー |
龍眼肉は、アジア食品店などで売られていることが多いです。ドライフルーツと同じ扱いでケーキに入れても相性が良いです。当帰もココアなど味の濃いものだと美味しい苦味になって違和感がありません。
当帰米粉ケーキだとこんな使い方です。こちらの動画▶️新しいページで開く
食品の他には、鉄の塊を鍋に入れて料理したり、鉄瓶を使ったりしていました。私は、扱いが面倒でバザーに出してしまいましたが、少し後悔しています。料理屋さんでも出汁入れなどに使われていますし、お茶を淹れる時のお湯を沸かすのにも雰囲気ありますね。
まとめ
重症の鉄欠乏の場合は、鉄分の薬やサプリを飲むのも応急処置でいいと思いますが、私のように副作用もあるため、やはり日々の積み重ねの食事からがベストですね。
鉄分を「ただ摂る」のではなく、「季節・体質・気分」に合わせて調整するのも薬膳の魅力です。小さな工夫で体はしっかり応えてくれると実感しています。
特に貧血が気になる女性や妊婦さん、出産後の回復期には「補血+消化力ケア」や自分の歯で噛むことが、とても大切。参考にしていただけたら嬉しいです。